nanadecorディレクター神田恵実がお届けする「未来へのチケット」と題したインタビュー。「わたしたちが今できることは?」と考えたとき、環境のこと、食べ物のこと、自然とひととの繋がりについて、もっと優しい社会を目指すため、まずは身近な小さなアクションから初めて欲しい。こんなメッセージを込めて、そのヒントをお伝えできたらと思います。モデルのNOMAさんが企画された本「WE EARTH」では私たちがどう自然と向き合うのかが詰まっています。子供時代のお話から、その本ができるまで、様々に学びを深めてきたNOMAさんの興味の源を掘り下げたお話から、自分への生活に取り入れる何かのヒントを見つけてください!

ナチュラリストとしてファッション業界でも定評のあるNOMAさん。nanadecorのアイテムをはじめオーガニックコットンを様々な角度から理解している方。同時に植物や食、環境など様々なジャンルへの学びが深く、nanadecorKITCHENの美恵先生が教えるフードレメディの資格を取得したり、nanadecorで行ったスペシャル企画、森田敦子さんのフィトテラピー講座の企画を提案してくれたりもしました。
今回発売された企画本はそのNOMAさんの知見や人脈が凝縮した一冊。ライフスタイルやオーガニックコットンへ興味を持ったきっかけ、そのルーツを紐解きながら、私たちがともに伝えたいことが見えてきました。

 

神田:NOMAはモデルとして活躍しながら、植物や自然のことを学んでいます。そのルーツは自然の中で育った子供の頃からのように感じます。


佐賀の美しい自然の中で育ったNOMA。お父さんは空手の先生もしていて厳しく育てられたとか。

 

NOMA:わたしは佐賀の出身で、地元では唯一のハーフの家族だったので、自分のルックスのこともあり、子供時代はまだ社会との距離感が取りずらかったんです。そんなとき、親は自然の中でたくさん遊ばせてくれたので、そこで自然との距離が縮まりました。植物採集をしたり、押し花を作ったり、手作りで紙に貼って、そこに辞典で調べた内容をメモをして、ファイリングしていたコレクションがあります。小学生低学年の頃から、子供ながらに「この植物は傷にいい」とか書いてあるんですよ(笑)。絵を描くのも好きで、手作りの絵本を作ったりもしていました。


押し花のコレクション。この頃から薬効など植物がエネルギーを持つことに興味があった。

 

神田:全くいまと変わらない探究心と表現力。植物が自分の拠り所であり、没頭する性格から学びがどんどん深まっていたんですね。そこからどうしてモデルの道へ?

NOMA:幼少期の自然の中での遊びから、思春期は「早く自由になりたい」、と思うようになりました。自由を得て、新しく興味を持った遊びがファッションやカルチャーだったんです。
そして福岡の大学へ進学し、国際情勢やインターナショナルリレーションシップ、平和の研究、国際環境法律などを学びました。そこでモデルのアルバイトを始めるようになったんです。それまでモデルになるなんて考えたことがなかったんですが、ここがスタートですね。

神田:自然への興味がそのままファッションやカルチャーへと繋がり、きっと新しい世界を見ることや知ることがさらにNOMAの探究心を育んでいったんですね。大学での学びも、今のサステナブルな生き方を目指す社会へとつながるもの。環境のことや、平和についてをグローバルに、深く学んできたんですね。その学びの先にはモデルという仕事があったのですか?


小さな頃から赤が似合うNOMA。後から出るnanadecorでも赤のドレスがお似合い。

 

NOMA:20歳の時に自分の国籍を選ぶことや、家族がアメリカに移住して、自分の思いを相談できずにいたりするうち、自分のバランスを崩してしまいました。とにかく具合が悪くなり、落ち込んで体重が落ち、自分が何をしていくのかがわからないどん底の状態になって。人生をどうしようか先が見えない時に、なぜかインドにいってみようと思いました。リュック一つで、写ルンですと下着と着替え1着でインドに行きました。デリーからバナラシ、アグラと周り大変な旅だったけれど、本当にインドが好きになり、とにかく元気になったんです。そこで自分の感性を取り戻し、自分らしさを取り戻すことができた。ここで初めて「わたしの世界は日本とアメリカンだけではないし、これから自分がどういう生活をしてくかを、真面目に考えすぎたんだな、と。感覚に身をまかせて行こう」と思ったんです。

神田:インドって底知れぬパワーがありますよね。わたしもnanadecorを始めた時に、インドにタオルを作りに数ヶ月住んだことがあって。もうなんでもありな世界の中で、それぞれがマイペースに、アグレッシブに生きる姿を見て、エネルギーをもらいました。インドが転機になって復活したのもわかります、視野が広がって何かが見えてきた?

NOMA:大学での学びは国連で働くようなヴィジョンを持っていてすごく面白かった。でももっと自分の五感を使って、地球のことを見たい、文化にリアルに触れ合いたいと思ったんです。後からインドで書いた絵日記を見てすごく面白かったのと、海外のモデルの方で本を出している方もいて、モデルをしながら世界を自分で見て、本を出したいな、と思うようになりました。そして大学も3年でほとんどのカリキュラムを履修しました。

神田:その集中力すごい。そこでモデルを選び、本格的に仕事へ向かったわけですね、でもNOMAはただ服を着ているというだけではなく、アーティストな部分が大きいですね。子供の頃のルーツの植物や自然、そして大学時代に学んだ、環境や平和への視点も加わって、マルチな活動になりましたね。


nanadecorの過去のコレクション、ベルガモットワンピースを自分らしくアレンジ

 

NOMA:服への想いだけではなく、表現していく、という部分に惹かれました。年に2回は長く休みを頂いてアフリカ、南米など、一人旅を含めて30か国くらい巡りました。それは今の自分の財産で、外を知れば知るほど、日本の魅力がもっともっと深まり、日本ってすごいって思いました。だから30代に入ってからは国内旅行で各地を見ています。メディアとは違う、その土地のことを実際に自分の目で知ること。同時にそれぞれの文化圏で自然と文化との営みが、絶妙なバランスで融合して伝承されていくことへの感動があります。

神田:そんな自然体な生き方が、今のNOMAさんの日常の生活に繋がっているんですね。精油や植物があり、着るものもオーガニックコットンやシルクなど、天然繊維を選んでいる。


世界中で集めた精油やオイルなど、貴重なコレクションが揃う

 

NOMA:実は植物やオーガニックコットンの素材がいかに自分を豊かに整えてくれるかを教えてくれたのは、モデルの仕事だったんです。全く美容に疎かったので、撮影でも「むくみって何?ドライアイって?」そんなレベルです(笑)。それまでは、あまり自分を労ることがわからず、気力が先にあったので、無理していることに気付けなかったんです。モデルは自分をニュートラルにバランスを保っていくことが一番大事。仕事ではアーティストの方や新しい世界に出会い刺激を受けて、プライベートも楽しい、そのスピードに自分がついていけずに、上京をして数ヶ月で帯状疱疹になりました。そこで「自分のからだをどういうふうにケアしていけばいいんだろう?」と考えた時に、お母さんがハーブティー出してくれたな、など植物を思い出したんです。肌が荒れたり、体調を崩したりしたことで、逆に植物の学びが深まりました。独学でスタートし、高橋美恵先生のフードレメディや植物療法の森田敦子さんに出会いさらにアロマや調香など、実践的に身について、今は点が横に広がっていく感じです。


「WE EARTH」の1ページから。自然界がつながっていることを紐解く

 

神田:植物から、鉱物や自然界への広がり。日本や世界で見てきたことを探究しながら様々な人々の出会い、学びが深まっていったんですね。それが「WE EARTH」の本に壮大に広がっています。小さい頃から学んできたこと、未来につなげていくには、どう環境を考えたらいいのか。それを様々な視点で教えてくれるので、読み応えもあるし、ゲストのみなさまも豪華です。わたしも同じように思うのは、オーガニックコットンを着ることはベースの点であって、それが睡眠を大切にすることや、心と体をゆっくり休めることにつながるといいと思っています。気持ちいい肌触りを着ていくと、肌が覚えて、それが着たいと肌から思う。五感が研ぎ澄まされていきますよね。知識を深めていくと、環境とコットンが繋がり、洗剤や水が気になるし、着心地でいうと、自律神経の安らぎが肌からも得られることを実感したりする。はじめは点で深めた興味が、段階を経て、実践の中でつながっていく。それが大事だと思います、


nanadecorの試作のワンピース姿、色の持つパワーも元気の源に

 

NOMA:オーガニックコットンは本当に気持ちいい。色や服を通しても自分をケアできるのは、シルクソックスでデトックスができることを知ったのが始まり。そこからシルクやオーガニックコットンが好きで、それが実際にサイエンスからも体にいいということを知ってから、肌に近いもの、インナーや下着、靴下はオーガニックコットンやシルクを選ぶことにしています。特にナイトウエアは長く素材には気をつけています。

神田:何か違いは感じましたか?

NOMA:肌が全然違います。乾燥具合が違うのと、睡眠に関しては全身で感じる、自分のリラックス具合も全然違う。今は当たり前のように着ているから、化学的な素材を着るとより感じます。やっぱり肌に密着させる生地は今は天然素材じゃないときもち悪いです。それをより、確信を持たせてくれたものがnanadecorの森田敦子さんのクラスでした。敦子さんが「肌は第二の脳だからね、脳と肌は、受精後の細胞分裂の時に、最初に同じ外胚葉から分かれ作られたのよ」というお話が印象に残っています。自分の感覚はこれだったんだな、とわかりました。

神田:そうオーガニック的なものは、これからはサイエンスの裏付けがどんどんされて、より私たちの実感値が証明されていくのでしょうね。オーガニックコットンを着ること、食事を変えること、薬ではなく精油やハーブティーを上手に取ることなど、自分が自然の恵を実感できる体でありたい。それは身近に自然を体感することから始まりです。NOMAもチューリップドレスやネルのパジャマなど、たくさんのnanadecorのナイトウエアを大切にとことん着てくれているから、もう化繊には戻れないでしょうね!


自宅のベランダから。実際に植物を育て、コンポストも実践している。

 

NOMA:ベランダで植物を育てたり、そこへ蝶やハチが飛んでくる。コンポストに野菜クズを入れる、そんなことをスタートすると、いかに私たちが生産サイドに行き過ぎているなと感じると思います。子供のときの自然遊びを振り返って思うのは、全てが繊細に繋がりあって、循環しあっている。ほんの端っこに私たちが生かされていることを知っておく、感じていくことがすごく大事だと思います。


様々な専門家が登場する「WE EARTH」の表紙もアートを活かしたデザインに。

 

神田:その始まりとして「WE EARTH」はすごく良いテキストです。これを読めば、自然の仕組みや私たちがどうあるべきかが分かります。専門家の先生陣のお話で、説得力もあるので、ぜひ皆さんに読んでいただきたいです!